津島軽便堂写真館

四日市 石原産業専用線にいた蒸機

四日市の石原産業専用線は、関西線の貨物支線の塩浜駅(近鉄塩浜駅に隣接)から出ていました。
昭和47年の私鉄要覧で調べると、
 塩浜~石原四日市工場1.6kmです。
1944(昭和19)年に運輸開始され、1968(昭和43)年まで明治生まれの古典蒸気機関車B6形が活躍していたことで有名でした。
B6形の2412号は、役目を終えたあと名古屋市科学館の前に保存されていましたが、これを動態に復元して走らせられないかという話が急浮上し、先日(H28.9.13)調査のため大阪のサッパボイラへ向けて搬出されました。

昭和43年に、Nさん
(当時・高校2年生)が四日市で撮影した写真をご覧ください。

左の地図は、国土地理院の電子国土Webから塩浜駅付近をコピーし石原産業専用線を青でなぞりました。
石原産業のSL①

 塩浜 2008(H20).4.13

Nさんが撮ったSL写真の前座で、石原産業の専用線が廃止になる直前の専用線起点・塩浜駅全景です。

この駅から手前側に昭和石油と石原産業の専用線が出ていました。
緑色のタンク車は、この近くの昭和石油製油所から松本へ石油を運びます(現在も存続)。
右の黄色い貨車が、液化塩素を専用線経由で石原産業の工場へ運んでいました。石原産業の専用線は、この年(2008/H20年)に廃止されたということで、最後の頃の風景です。
石原産業のSL②

 塩浜 2008(H20).4.13

上の写真の反対側で、陸橋の上から撮りました。
右(西)の方に近鉄名古屋線が走り、その右には近鉄の塩浜検修車庫があります。
この日塩浜検修車庫で「きんてつ鉄道まつり2008」が開催され、それを見学に行ったついでに撮りました。

写真向こうの方へ昭和石油と石原産業の専用線が単線並列で出ていました。
石原産業のSL③

 塩浜 2008(H20).4.13

石原産業専用線の晩年をネットで調べると、液化塩素輸送用の黄色い貨車(タキ5450形)だけが運行されていたようです。
残念ながら、石原産業専用線の沿線では写真を撮らずに終わってしまいました…


ここまでは前座で、この下から石原産業の蒸気機関車が登場します。
石原産業のSL④ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

Nさんは鉄道雑誌で古典SLが引退することを知り、撮影に出かけました。

明治生まれの古典機B6形以外にも、S108号蒸機がいました。1942(昭和17)年、海南島向けに日本車輌で製造された機関車ですが、戦局悪化で海南島へ渡ることなく、八幡製鉄所で使用されたあと、ここへやってきました。
1968(S43)年に引退したあとは、神戸の小寄公園で保存されているそうです。
石原産業のSL⑤ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

S108号を斜め後ろから見ました。
後ろの顔は、何となくユーモラスな感じですね!
石原産業のSL⑥ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

S108号を真横から見ました。
向こう側にB6形が停まっているのが見えます。
石原産業のSL⑦ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

B6形2412号の登場です。

国鉄2100形として、1890(明治23)年にイギリスから輸入され、その後、ドイツやアメリカでも製造され、総計533両が登場しました。
B6は大別すると下記4形式ありました
2100形(2100~2116)イギリス製
2120形(2120~2387)イギリス製・一部国産
2400形(2400~2474)ドイツ製
2500形(2500~2667)アメリカ製


2412号はドイツ製B6最後の機関車だったようで、この年に引退し、名古屋市科学館で保存されました。
なお、B6最後の現役機関車は、北海道の三美運輸のイギリス・アメリカ製機関車2両で1973(昭和48)年まで使用されました。
三美運輸参照
石原産業のSL⑧ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

2412号の形式写真です。

2412号は1904(明治37)年に、ドイツのハノーファー社(HANNOVER)製の機関車です。1948(昭和23)年に国鉄(高山機関区)で廃車になり、石原産業へ払い下げられました。
詳細は
Wiki 国鉄2100形機関車参照
石原産業のSL⑨ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

斜め後ろから見た2412号です。
石原産業のSL⑩ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

キャブ横の銘板です。
1904(明治37)年に製造されたことが分かります。
昭和41年7月に国鉄長野工場で定期検査を受けました。
昭和23年に国鉄から譲渡されたのですが、定期検査は国鉄(長野工場)へ委託していたようです。
石原産業のSL⑪ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

車庫の給炭台から運転台後ろにショベルで石炭を積み込んでいます。
なかなか良い感じですね!
石原産業のSL⑫ Nさん撮影

終点の車庫 1968(S43)年初春

車庫から出たB6です。
廃車が迫ったB6形の活躍は、テレビでも何度か放映されました。
     ↓
 NHKみちしる
「B6 コンビナートの工場群を走り抜ける

 ↑走行シーンが見られます。
石原産業のSL⑬

名古屋市科学館 1971(S46)年初春

石原産業で1968(昭和43)年7月に廃車となった2412号は、すぐに名古屋市科学館で保存されました。

科学館の北側に保存されていましたが、その後南側へ移転され、現在(2016/H28.10) は大阪で検査中のため、約半年間不在です。

最近の保存B6の写真は
 →名古屋市科学館のHP
 →M.TADAさんのHP
    をご覧ください。


津島軽便堂で、2412号以外のB6形の写真は、
 →三美運輸(現役時代)
 →西濃鉄道(廃車後)
     でご覧いただけます。
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参考図書:昭和47年度「私鉄要覧」運輸省鉄道監督局監修  鉄道図書刊行会1972(S47)年発行