津島軽便堂写真館
名古屋本線 御油~名電赤坂 2013(H25).8.8

名鉄 デキ400形  愛電の残党、最後の頃の記録

名鉄デキ400形は、愛知電気鉄道(愛電)が1930・31(昭和5・6)年に各1両製造した箱型電気機関車で、名鉄合併(1935/昭和10年)後も、貨物輸送の主力機関車として常滑線・三河線などで活躍しました。(昔の名鉄は貨物輸送が盛んでした)
1983(昭和58)年末限りで名鉄は貨物輸送をやめたので、その後は工事列車(深夜のレール・砕石輸送)として使われ、デキ400形は東部地区担当で、矢作橋駅
(後に豊明検車区)へ常駐するようになりました。1993(平成5)年に特別整備(外板張替)を実施し青いデキとなりましたが、2015(平成27)年に後継の赤いデキEL120形(2両)の登場により予備車となり、2016(H28)年6月6日に2両そろって廃車になりました。有志の方々による保存活動も始まっていましたが、諸般の事情により解体されてしまいました。愛電最後の生き残り車両だったのに、何のイベントも行われずに廃車解体されたのは誠に寂しい限りです。廃車から1年半以上たち、デキ400形の記憶もだんだん薄れていってます。そこで私が、「デキ400形」の最後の頃の写真をまとめましたのでご覧ください。
名鉄の「デキ」については、名鉄資料館で2015(平成27)年秋に特別展を開催しました→名鉄の電気機関車「デキ」写真展 こちらもご覧ください。
↑デキ400形の車両竣工図  名鉄資料館2015(H27)年10月開催-名鉄の電気機関車「デキ」写真展-に展示された資料(名鉄資料館所蔵)
名鉄デキ400-①

 大江 1982(S57).2.28

常滑線70周年で、「デキ401-モ810-ワム6017-デキ376」の混合列車が運転されました。
イベント用に名鉄線で混合列車が運転されたのは、このときが最初で最後だったと思います。大江仕立で、常滑まで一往復し、最後は東名港まで走りました。

特別整備前の黒いデキ400形です。
原形に近いスタイルですが、前照灯は2年くらい前にシールドビームに取り替えられていました…
名鉄デキ400-②

 大江 1982(S57).2.28

この当時は、まだ常滑線に貨物列車が残っていましたので、大江・東名港に機関車が常駐していました。デキ402号も大江構内にいました。
愛電の車号の付番は0から始まり、1930(昭和5)年に製造されたデキ400形の最初の機関車は400号でした。401号はその翌年にできました。名鉄合併時に1から始まるように車号が変更され、400号は402号となりました。

写真①は北側から、②は南側から撮ったのですが、2両が逆方向を向いていました(パンタの位置が逆向き)。
知立と西枇杷島に△線がありましたので、どちらかで向きが変わったと思われます。
名鉄デキ400-③

名電赤坂~長沢 2013(H25).8.8

デキ401号が舞木検査場で定期検査を受け、伊奈まで1往復の試運転を行いました。

デキは工事列車用に深夜・早朝のみの運転でしたので、昼間に撮れるのは試運転の時しかないと、電車に乗り、撮りに出かけました。


デキ400形は特別整備を実施し1993(H5)年に2両とも青いデキになりました。青い色はデキ400形によく似合いました。
名鉄デキ400-④

 伊奈 2013(H25).8.8

上の写真③を撮った場所で知人に出会い、車に便乗させてもらい試運転の折り返し駅・伊奈まで来ました。
名鉄デキ400-⑤

小田渕~国府 2013(H25).8.8

試運転の折り返し列車です。
真横から撮りました。
名鉄デキ400-⑥

御油~名電赤坂 2013(H25).8.8

赤坂小学校の茶文字の前を走るデキ401号です。
茶文字には「OTOWA」「赤坂小」と記されています。旧・音羽町(現・豊川市)の赤坂小学校が、この左上にあります。

試運転列車は国府駅でしばらく停車するので、その間に車で追い越して待ち構えました。

一番上の写真は、この写真の直前に撮りました。
名鉄デキ400-⑦

 大江 2014(H26).5.17

名古屋市交通局のN3000形の搬入のときです。
15時頃に名古屋臨海鉄道のDLに牽引され、大江に到着後はデキとデキの間に挟まれて留置され、終電間際に大江を出発します。
大江から金山で折り返し、知立・豊田市経由で赤池の名市交・日進工場まで輸送します。
金山まではデキ600形が先頭で、そこからはデキ400形2両+デキ600形1両の三重連で牽引して運びました。
名鉄デキ400-⑧

 西枇杷島 2015(H27).7.12

大江から須ヶ口へ早朝に回送されるデキ400形重連です。

この当時、デキは早朝・深夜しか運転されませんでした。早起きは苦手ですが、デキの走行写真を撮るためには早起きするしかありません…。デキ400形の終焉が迫ってきたので、頑張って早起きしました。

この年の1月末、赤いデキEL120形が2両完成、2月から試運転を開始し、6月頃から本格使用が開始されました。
青いデキ600・400形は役目を終え、デキ600形4両は、この9日後の7月21日に廃車、解体され、デキ400形2両は予備車となり、新川検車区(須ヶ口)の片隅に留置されるようになりました。
名鉄デキ400-⑨

 二ツ杁 2015(H27).7.12

デキの回送列車は、二ツ杁駅で急行を待避します。
上の写真⑧を撮った後、急いでダッシュして撮りました。西枇杷島~二ツ杁は駅間600mです。
名鉄デキ400-⑩

 須ヶ口 2016(H28).2.24

上の⑧⑨と同じ時間帯に走るデキの回送です。6:20頃に須ヶ口へ到着しますが、冬場はまだ薄暗かったです。


デキ400形の最後の年は、新川検車区の留置スペースの関係で大江駅へ留置されるようになり、検査のため時々須ヶ口まで早朝に回送されるようになりました。
名鉄デキ400-⑪

 須ヶ口 2016(H28).2.24

上の写真の続きです。
須ヶ口へ到着したデキ400形は、沈みかけた満月を見ながら、車庫(新川検車区)へ入っていきました。
↙名鉄デキ400-⑫ 栄生 2016(H28).3.31

朝日を浴びた名駅の高層ビルをバックに、デキ400形が走ってきました。
6:10頃です。
↓名鉄デキ400-⑬ 栄生 2016(H28).3.31

左の写真の続きです。デキ400形が近づいてきました。
名鉄デキ400-⑭

 栄生 2016(H28).5.5

上の写真⑬の約1ヶ月後です。
同じ時間ですが、日の出が早くなりデキの側面に日が当たるようになりました。
名鉄デキ400-⑮

 二ツ杁 2016(H28).5.5

上の写真⑭を撮った後、急行佐屋行きの先頭に乗り、二ツ杁で追い越すときに運転台後ろから撮りました。

上の写真⑨は、追い越しシーンを踏切から撮っていますが、こちらは車内から撮りました。(同じダイヤです)
名鉄デキ400-⑯

 須ヶ口 2016(H28).5.5

上の写真⑮を撮った後、須ヶ口駅へ先着し、ホーム端でデキ400形の到着を待ちました。
名鉄デキ400-⑰

 神宮前 2016(H28).5.14

デキ400形の最後です。
廃車準備のため、須ヶ口から舞木検査場まで回送されることになりました。

とりあえず、早朝に須ヶ口→大江へ回送し、この日の夜、大江→豊明へ回送、翌日早朝に、豊明→本宿(折返し)→舞木検査場へ回送されました。

この回送列車を撮るため、神宮前で待ちました。
名鉄デキ400-⑱

 神宮前 2016(H28).5.14

神宮前3番線に到着したデキ400形です。
一旦停止し、大江に向かいました。
名鉄デキ400-⑲

 神宮前 2016(H28).5.14

跨線橋を渡るデキ400形です。
本線の6500系が神宮前1番線に到着します。
名鉄デキ400-⑳

東岡崎~岡崎公園前 2016(H28).5.14

上の写真⑰~⑲の翌日です。
早朝に豊明から舞木検査場へ回送されました。
ここ(岡崎公園・菅生川橋梁)で6:30頃に撮るためには、家を5時頃に車で出発せねばなりません。デキ400形の本線走行はこれが最後と思い、頑張って早起きしました。

ここは名古屋本線東部の撮影ポイントなので、大勢のカメラマンが待ち構えていました(知り合いも何人かいました)
名鉄デキ400-(21)

名電山中~藤川 2016(H28).5.14

上の写真⑳を撮った後、国道1号線を走り、舞木検査場の下へ来ました。

デキ400形の回送は、美合で特急・急行を待避するので何とか先回りできました。ここも
大勢で待ち構えました。(ほとんどの人が美合待避を利用した車追っかけ組でしたが…)
名鉄デキ400-(22)

名電山中~藤川 2016(H28).5.14

上の写真(21)の続きです。
舞木検査場の下です。
検査場の1番線には、ステンレス車5000系が停まっていました。
名鉄デキ400-(23)

本宿~名電山中 2016(H28).5.14

舞木検査場の下を通り過ぎたデキ400形は、一旦本宿まで行って折返します。
その折返しを待ち構えて撮りました。
右は旧東海道の国道1号線です。
名鉄デキ400-(24)

 大江 2016(H28).6.6

デキ400形最後の日です。
舞木検査場から回送され、大江に留置されました。
これから、右の方へ分岐する東名古屋港へ最後の旅路です。
名鉄デキ400-(25)

 大江 2016(H28).6.6

大江~東名港を走る5000系がホームに到着します。
朝の最終列車
(この次の列車は夕方)を待つ人がホームにいます。
私もこの折返し列車に乗り、東名古屋港に向かい、デキ400形を待ち構えることにしました。
名鉄デキ400-(26)

大江~東名古屋港 2016(H28).6.6

築港線のお立ち台です。
デキ400形最後の自力走行です。

東名古屋港から歩いてきたら、既に大勢のカメラマンが待ち構えていましたが、知人を見つけて、割り込ませてもらい撮りました。
名鉄デキ400-(27左上・28右上・29左下・30右下) 東名古屋港 2016(H28).6.6

東名港へ到着したデキ400形2両は、ベンツ製の軌陸車に牽引され三角地帯へ(27~29)、その後推進されて吊り上げ場所へ移動しました。
名鉄デキ400-(31)

 東名古屋港 2016(H28).6.6

築港線平面交差の向こう側で、まずデキ402号が吊り上げられました。
名鉄デキ400-(32) 東名港三角地帯 2016(H28).6.6

402号をトレーラーで運び出した後、401号もトレーラーに乗せられました。これから手前の踏切を渡って解体場へ向かいます。
名鉄デキ400-(33) 東名港・名臨海踏切 2016(H28).6.6

左の写真の続きで、道路に出てきました。手前の「止まれ」のこちら側の踏切に近づきます。

名鉄デキ400-(34)

東名港・名臨海踏切 2016(H28).6.6

トレーラーに乗せられて名古屋臨海鉄道の踏切を渡るデキ401号です。
名鉄デキ400-(35)

大江・築港線踏切 2016(H28).6.6

上の写真(34)を撮った後、知人の車に乗せてもらい、デキ401号を追いかけました。
〈車号入りの砂箱(正面右)や前照灯はバザーで売るために取り外されています〉

築港線の踏切を渡るデキ401号です。
つい2時間前には、この踏切の線路を自力走行したばかりでしたが…
名鉄デキ400-(36)

大江付近・解体場 2016(H28).6.6

401号を乗せたトレーラーは、大江駅近くの金属リサイクル・産業廃棄物処理工場に到着しました。
デキ400形2両は、ここで解体されてしまいました。

一般の人の目に触れることも少なく、こっそりひっそり生き延びた愛電の最後の残党は、消えていきました。
保存できなかったのが返す返すも残念無念です!
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参考図書:「写真が語る名鉄80年」 1975(昭和50)年3月 名古屋鉄道発行
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