野上電鉄 1/2      元阪神の小型電車が活躍するローカル私鉄でした

野上電気鉄道は、和歌山市の少し南にありました。
日方(ひかた)〜登山口 11.4km
最初から電化された私鉄で、開業は紀勢線よりも古く1916(大正5)年でした。
この規模のローカル私鉄は、昭和40年代後半にはほとんど廃止となりましたが、野上電鉄は奇跡的に生き長らえ、1994(平成6)年に廃止となりました。
とはいえ、廃止前は地元の評判もあまり良くなく、悲惨な状況だったということです。
左の地図は、1/20万「和歌山」S42.7.30国土地理院発行より
野上電鉄を赤線でなぞり、が撮影した最寄駅、が交換駅です。
野上電鉄@

日方(連絡口) 1972(S47).5.3 

私が野上電鉄を訪問したのは1972(昭和47)年5月3日でした。
前日に宿泊した大阪から、阪和線・紀勢線を乗継ぎ、海南に向かいました。
海南駅で降りて、野上電鉄を探したらホームの端から駅舎と反対側に連絡通路がありました。そこを歩いて行ったら、ここ(左の写真)に着きました。
起点の「日方」ではなく、「連絡口」という駅名標でした。

この「連絡口」は日方駅の構内扱いで国鉄との乗り換えのためのホームでした。写真向こうに見えるのが日方駅のホームです。

左上の地図の左端に海南まで南下する私鉄路線が記入されていますが、これは南海和歌山軌道線で、私が訪問したときには既に廃止になっていました。Wikipediaで調べると、1971(S46)年廃止になっています。
野上電鉄A

日方(連絡口) 1972(S47).5.3 

待っていると、まず日方行きが連絡口で国鉄への乗換客を降ろして通り過ぎ、目と鼻の先の日方ホームへ到着しました。
望遠で撮ると本当に近く見えます。

折返してくる登山口行きの電車を「連絡口」で待つ、国鉄からの乗換客たちです。

当時、電車は30分間隔で運転されており、ローカル私鉄としてはものすごく便利で、お客さんもそれなりに乗っていました。
隣の海南駅から和歌山へ行く当時の国鉄の普通列車は1時間に1本程度でした。
野上電鉄B

 日方 1972(S47).5.3 

日方と連絡口の間(日方駅構内)には留置線が広がっており、いろんなタイプの小型電車が留置してありました。

ガラス張り観音開き貫通扉の51号は、元阪神の電車です。
側窓上に明かり窓もあり、私の大好きなタイプですが、残念ながら動いているのを見ることはできませんでした。
野上電鉄C

 日方 1972(S47).5.3

上の写真Bの少し左側から撮った51号です。


左横の奥には同じタイプの電車(たぶん52号)がいますが、前照灯を外されていますので、廃車待ちという感じがしました。
 
野上電鉄D

 日方 1972(S47).5.3

手前に停まっている、とんがり帽子の尾灯が魅力的な電車は23号です。
その向こうに停まっている電車32号と床や屋根の高さがだいぶ違います。
こんなところ(車両数は少なくても種々雑多)がローカル私鉄の魅力でした。

この23号は元阪急の電車で、当時それ以外の電車は全て元阪神でした。
阪急も阪神も軌間1435mm(標準軌)で、野上電鉄の1067mmとは線路の幅が違います。従って足回りは同じ軌間の南海などから譲り受けています。

ホームに停まっている電車は25号です。
野上電鉄E

 日方 1972(S47).5.3

魅力的な前面5枚窓・貫通扉付きの24号です(右手前)。
元阪神電車で、野上電鉄廃止後に阪神電鉄へ里帰りし、保存されています。

左の方には、増結用のクハ104号(手前)と、101号(奥)がいます。
野上電鉄F  Nさん撮影

日方(連絡口) 1973(S48).1..27

魅力的な24号をカラーでご覧ください。
褪せた青緑色のような色で、かすれた黄色の帯が巻いてありました。



Nさんは、私の約9か月後に野上鉄道を訪問しました。
野上電鉄G  Nさん撮影

日方 1973(S48).1..28

日方駅のホームから見た情景です。
模型で作ってみたくなりますね。


右の方に写っているのが、国鉄海南駅で、紀勢線はまだ電化されていません。ちょうど天王寺行きキハ82系特急「くろしお」が通過しています。
野上電鉄H

 日方 1972(S47).5.3

電車の出発時間が近づいたので、改札が始まりました。


上の写真Gとほぼ同じ場所です。
向こうの方に見えるのが「連絡口」のホームで、上の@AFのちょうど逆方向から見ていることになります。
野上電鉄I

 日方 1972(S47).5.3

改札風景です。
駅員が切符に入鋏するのも、今となっては懐かしいシーンです。

ホームに停まっている電車は、明かり窓付きの31号です。
野上電鉄J  Nさん撮影

日方〜春日前 1973(S48).1..28

日方(連絡口)を出発して、登山口に向かう電車です。

ミカンが実っていました(ちょっと時期が遅いような気がしますが・・・)。
Top頁(Home)へ  次の頁(野上電鉄2)へ

参考図書:
  「新・消えた轍8近畿-ローカル私鉄廃線跡探訪-」寺田裕一著 ネコ・パブリッシング2010.10.30発行
  「世界の鉄道'74」朝日新聞社1973(S48).10.14発行
  鉄道ピクトリアル・アーカイブスセレクション19「私鉄車両巡り・関西」鉄道図書刊行会H22.12.10発行