有田鉄道  有田ミカンを全国に発送するため、大正時代にできました。

有田鉄道の地図 有田鉄道は、有田川流域の特産品のミカンを湯浅港に運ぶためにできた鉄道です。その歴史は古く、紀勢線ができる前の1916(大正5)年に、湯浅の港近くの海岸駅から金屋口駅まで9.1kmが全通しました。
その後、紀勢線が1927(S2)年に湯浅まで南下し、藤並〜湯浅は並行路線となりました。戦時中の1944(S19)年に並行路線である海岸〜湯浅〜藤並(左図の青線)は営業休止となり線路が撤去されました。復活することなく、そのまま廃止になっています。

私の知っている有田鉄道は、藤並〜金屋口5.6km(左図の赤線)の小さな鉄道でしたが、そのような歴史的背景から、一部の列車は国鉄紀勢線に乗り入れて、湯浅まで走っていました。

私が有田鉄道を訪問したのは1972(S47)年5月4日でした。
当時もお客さんが少なく、いずれ近いうちに廃止になると思っていましたが、それから30年も存続し、2002(H14)年12月31日限りで廃止されました。

2010(H22)年3月、終点の金屋口駅跡に有田川町鉄道文化交流館ができて、廃止時の車両が保存されています。

左の地図は、1/20万「和歌山」S42.7.30国土地理院発行より
有田鉄道@

 湯浅  1972(S47).5.4

国鉄の湯浅駅に乗り入れてきた、有田鉄道のキハ07-207号です。

この駅で折返し、金屋口へ戻ります。
このホームにしばらく停まっていました。


私はこの日、御坊臨港鉄道で写真を撮った後、有田鉄道を訪問しました。
数少ない国鉄乗り入れ列車に乗れるよう計画を組み、湯浅から乗車しました。
有田鉄道A

 湯浅  1972(S47).5.4

天王寺行きの急行列車が来ました。
当時は急行列車も長大編成でしたね。
 有田鉄道B 湯浅  1972(S47).5.4
  貨車も停まっていました。
 有田鉄道C 藤並  1972(S47).5.4
  湯浅から乗ったキハ07は、藤並に到着しました。
  ミカン輸送用(季節外れですが)の通風貨車がたくさん置いてありました。
 
有田鉄道D

 藤並  1972(S47).5.4

当時の有田鉄道起点の藤並駅です。
この駅でしばらく停車しました。

キハ07207号の左下の白い四角の枠の中を拡大して読むと、
  45−10
  名古屋工
と書いてあります。


私はこの気動車を昭和45年4月に国鉄大垣電車区で見ています(下の写真K)ので、昭和45年10月に国鉄名古屋工場で定期検査をしてから、有田鉄道に譲渡されたと思われます。
有田鉄道E

金屋口  1972(S47).5.4

終点の金屋口駅に到着しました。

乗ってきたキハ07-207号が手前にいます。奥には同期生の206号もいました。
右にはミカン輸送用のディーゼル機関車がいます。このときはシーズンオフのため、右のセメント専用倉庫にセメント袋を詰めた貨車を細々と運んでいたと思います。
有田鉄道F

金屋口  1972(S47).5.4

上の写真Eの逆方向を見た風景です。
使われなくなった気動車と貨車が置いてありました。

左に曲がっていく線路が藤並につながる本線です。
有田鉄道G

金屋口  1972(S47).5.4

ディーゼル機関車を横から見ました。

ワムの中には、まだセメント袋が残っていました。
荷下ろし作業の途中だったと思われます。
 
有田鉄道H

金屋口  1972(S47).5.4

キハ07に油を補給するようです。
有田鉄道I

金屋口  1972(S47).5.4

湘南形の250号がいました。
もう使われていないような感じでした。
 
有田鉄道J

金屋口  1972(S47).5.4

奥の210号は足下を取り去られ、ドラム缶の上に乗っていました。 
その奥には屋根を取り去られた201号が・・・

これが、私が有田鉄道で撮った最後の写真となりました。結局、走行写真は撮らずじまいでした。

有田鉄道は、この後30年存続しましたが、再訪せずに終わりました。
有田鉄道K

大垣電車区 1970(S45).4.29

私が有田鉄道を訪問したときに活躍していた気動車はキハ07-206・207号でした。
そのキハ07-206・207号が有田鉄道に譲渡される前は、国鉄樽見線で活躍していました。


先輩に引率されて1970(S45)年に大垣電車区を見学したとき、それまで見たことのないキハ07形が留置してありビックリしました。
既に、樽見線での活躍は後進のキハ17系や20系に譲って、静かに引退を待つという感じでした。
有田鉄道L Nさん撮影

下津野付近  1993(H5).10.24

上の@〜Jの写真の21年後です。
Nさんが訪問しました。

キハ58形を1975(S50)年に、富士急行から3両譲り受けました。
その翌年、キハ07形をキハ58形に置き換えました。
両運転台のキハ58003号が走ります。
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参考図書:
  鉄道ピクトリアル・アーカイブスセレクション19「私鉄車両巡り・関西」鉄道図書刊行会H22.12.10発行
  「新・消えた轍8近畿-ローカル私鉄廃線跡探訪-」寺田裕一著 ネコ・パブリッシング2010.10.30発行