津島軽便堂写真館

花巻電鉄   東北最後の762mm軽便鉄道だったのですが・・・

「馬づら電車」で有名だった花巻電鉄・鉛線(左図青線)は、1969(昭和44)年に廃止になりました。
私が各地へ撮影旅行に出掛け始めるよりも前の時代で、残念ながら現役時代を見ることはできませんでしたが、鉄道雑誌などで見た、独特の細長い文字通りの馬面電車は、今も脳裏に焼き付いています。
ナローファンなら誰でも知っている花巻の「馬面電車」については、いろんな書籍に掲載されていますので、そちらをご覧ください。
代表的なものは、軽便鉄道界の大御所お二人の本で、
→「私鉄紀行 奥の細道(上)」湯口徹著 エリエイ 1985(S60).2発行
→「軽便追想」高井薫平著 ネコ・パブリッシング 1997(H9).4発行 です。
インターネットなら→「地方私鉄1960年代の回想」をご覧ください。
いずれも昭和30年代を中心とした、素晴らしい情景の写真が掲載されています。狭い道路の脇を砂埃を巻き上げながら走る馬面電車の写真を見ると、もう少し早く生まれていたら、こんな素晴らしい鉄道風景が見られたのに・・・と思わずにいられません!

花巻から花巻温泉へ至る路線(左図赤線)は、1972(昭和47)年2月16日に廃止になりました。道路上を走る軌道の鉛線と異なり、鉄道線でしたが、路面電車タイプの電車が走っていました。レールの幅は共に762mmでした。
←国土地理院1/20万「盛岡」S45.2.28発行(左端は「秋田」S47.8.30発行)より
花巻電鉄① Nさん撮影

 瀬川 1971(S46).10.9

鉄道線の中間駅・瀬川で列車交換しました。
花巻温泉から路面電車タイプの電車デハ57号が走ってきました。

Nさんは、鉄道線の現役時代に間に合いました。廃止の約半年前です。
この頃は会社名も、花巻電鉄→岩手中央バスに代わっていました。

(岩手中央バスでは馴染みがないので、このページの写真は花巻電鉄で統一します)
花巻電鉄② Nさん撮影

花巻温泉 1971(S46).10.9

なかなか立派な終着駅でした。
ムードがありますね!
Nさんは15:36に到着し、15:45に折り返しました。花巻温泉滞在わずか9分でした。
花巻電鉄の写真は①②の2枚しかありません・・・
この写真を撮った約半年後に、花巻~花巻温泉7.4kmが廃止になりました。


この写真を見ると、私は名鉄の谷汲駅を思い出します。どことなくムードが似ています。
花巻電鉄③ 花巻 1972(S47).3.16

廃止から1ヶ月後の、花巻駅横の車庫です。写真左が、国鉄花巻駅です。
架線や線路は撤去されていました。
放置された28号には、お別れ列車用の飾りが取り去られたような跡が残っていました。
1972(昭和47)年の春休みに「東北私鉄めぐり」の一人旅を計画しました。
上野発22:05急行「北星」に乗り、最初の訪問地・花巻で3月16日6:05に下車しました。
馬面電車で有名な花巻電鉄の鉛線は既に廃止になっていましたが、同じ762mmの鉄道線・花巻温泉線が残っているはずでした。そう信じて花巻駅で降りたのですが、このちょうど1ヶ月前に廃止になっていました。1年前の北丹鉄道訪問と全く同じパターンで、廃止になったことを全然知らずに訪問しました。
この当時、東北唯一のナロー営業路線で、期待して行ったらこんな状況で、ガックリしました。出鼻をくじかれたとは、まさにこんな状況のことを言うんでしょうね!
花巻電鉄④ 花巻 1972(S47).3.16

上の写真③を撮った場所から花巻駅のホーム方向を振り返ると、馬面電車がいました。
憧れのこの電車を見られことが、せめてもの救いでした!(今も花巻駅近くに保存されているようですが)
左手前にはワ1号が置いてあり、「岩手中央バス」と社名が記載されていました。1年前に花巻電鉄からこの社名に変更されたのに、1年で鉄道は廃止になりました。
ワ1号の向こうにはト1号がいて、右にはサハの廃車体が置いてありましたが、馬面電車以外はしっかり撮っていません。軽便の師匠Koさんに怒られそうです・・・
それよりも、右端の廃止となった花巻駅の低いホームです。この駅跡をきちんと撮らなかったのが悔やまれます。
花巻電鉄⑤

 花巻 1972(S47).3.16

馬面電車を上の④の反対側から見ました。
本当に愛嬌のある顔ですね!
花巻電鉄⑥ 花巻 1972(S47).3.16

馬面電車をたくさん撮りました。
この写真には車号が写っていて、デハ3号であることが分かりました。
この電車の車体幅は1600mmで、前が絞ってあり余計狭く感じます。
車体幅2236mmで同じように前が絞ってあった2代目馬面電車:名鉄美濃町線のモ600形が思い出されます↓
花巻電鉄⑦

 花巻 1972(S47).3.16

車庫の前に残されていた3両です。
上の写真③の反対側から撮りました。
↑花巻電鉄⑧ 花巻 1972(S47).3.16

貨車と生け垣の狭い隙間から、デハ3号です。
←花巻電鉄⑨ 花巻 1972(S47).3.16

サハ101号の正面です。
右奥に花巻電鉄花巻駅のホームが見えます。
花巻電鉄⑩ 花巻 1972(S47).3.16

花巻電鉄で1日かけてじっくり写真を撮ろうと思っていたのですが、1ヶ月前に廃止でガックリし、滞在2時間弱で撤退しました。
花巻電鉄⑪ 花巻 1972(S47).3.16

花巻電鉄最後の写真も「馬づら電車」デハ3号です。無蓋車ト1号の上から撮りました。花巻電鉄の現役時代にタッチの差で間に合わなかったという無念な思いはありますが、どのみち、この馬面電車の現役時代には周回遅れで間に合っていませんので、諦めもつきます。
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参考図書:
  レイルNo.14 「私鉄紀行 奥の細道(上)」 湯口 徹著 エリエイ 1985(S60).2.11発行
  「軽便追想」 高井薫平著 ネコ・パブリッシング 1997(H9).4.30発行
  「私鉄車両めぐり特輯[第Ⅱ輯]」 鉄道図書刊行会 1977(昭和52)年7月発行(元は私鉄車両めぐり第9分冊1968.7月号)