津島軽便堂写真館

福井鉄道600形改造工事 記録写真

福井鉄道600形601 ①

武生新(現・たけふ新) 1997.12.26

モハ600形運行記念のヘッドマークを付け、運行開始出発式の準備が整った601号。


福井鉄道600形は、名古屋の地下鉄車両を改造して、1997(平成9)年12月に導入されました。

この車両の改造工事は、名鉄の車両部門の子会社である名鉄住商工業・岐阜工場で実施しました。私は名鉄住商の担当責任者として深く関わりましたので、その記録を綴ります。
福井鉄道601号 工事記録写真帳  名古屋市交通局(名城線)1111・1112号を改造 工事期間1997(H9)年6月~12月
福井鉄道600形導入までの経緯
• 福井鉄道は名鉄グループだったので、車両の故障防止対策、作業手順書作成で名鉄の車両部門の子会社・名鉄住商が協力。 車両の近代化についても相談があり、市内線乗り入れ用に小型で単行運転できる車両を希望された。
• 中小私鉄の近代化のため、国・県が認めれば1/3を国が補 助、1/3を県が補助、残り1/3を会社負担で車両導入できる 補助制度があった。
• 計画では、1997(平成9)年から3年間1両ずつ導入
• 当時、豊橋鉄道が600V→1500V昇圧を 計画していたので、廃車予定の冷房車1900系(元名鉄5200系)をワンマン改造する案を提案したが、市内線幸橋の重量制限を超えるので却下された
• 名古屋地下鉄では、東山線・名城線の 非冷房小型車両(15m)の廃車を進 めていた。
• 京王重機が営団地下鉄の小型車両の運転台を切り継ぎ両運転台化した例 があったので、福井鉄道へ名古屋地下鉄改造案を提示。
• 1996(平成8)年10月に、名古屋市交通局へH9年度の廃車譲渡を正式申し入れ。(初の名古屋地下鉄車両譲渡)
• 廃車予定の名城線1100形は、600V車であるが、非冷房で 軌間が異なるため、台車と冷房装置を調達する必要があった。昇圧を計画していた豊橋鉄道へ、廃車予定の1900系から台車・主電動機・ 冷房装置(電源含む)の譲渡を申し入れた。

福井鉄道600形の改造工事内容
・両運転台化(運転台切継) ・台車と主M交換(軌間が異なる) ・ 冷房・暖房装置取付
・パンタグラフ取付、屋根絶縁化 ・中間扉をふさぎ、窓と座席取付
・軌道部乗降用折畳みステップ、手すり取付 ・ワンマン運転化 ・ ブレーキ装置変更
・運転台窓ガラスを熱線入に変更(300形と同じサイズに縮小) ・列車無線取付
・ATS取付・急行選別アンテナ取付・救助器取付 ・出発ベル取付 ・車幅灯取付
・車体内装張替 ・床張替 ・天井ダクト(冷房用)取付・窓カーテン取付 ・外板塗装
○これは、名鉄住商始まって以来の大改造工事だった。電線の引替、新設の量が膨大だったこともあり、工事量は予定より大幅に増加。工事は遅れ、最後の1週間は徹夜に近い状態で工事を行った。
・1997(H9).6.12名市交・名港車庫から1111+1112号を搬出、岐阜工場で改造工事
・1997(H9).12.16福井鉄道西武生車庫へ搬入、12.26に出発式、営業運転開始
福井鉄道600形601 ②

田原町 1997(H9).12.26

武生新で発車式をしたモハ601は、運行記念のヘッドマークを付けて田原町行き普通列車で初の営業運転を行いました。
福井鉄道600形601 ③

西武生(現・北府) 1998(H10).1.27

福井鉄道600形601の試運転

運行開始から1ヶ月。
順調に活躍していましたが、空調制御装置(低圧電源も供給)が故障したので、修理してから試運転に出発です。

空調制御装置は、豊橋鉄道で約10年使用済みの中古機器なので、故障はやむを得ないと思われました。
601号の登場を記念して、福井鉄道から「バトンタッチ記念乗車券」が発売されました。
2折りのカバーの中に2枚の記念乗車券がセットされた物です。
↓記念乗車券のカバー


←記念乗車券2枚セット
 上が表面、下が裏面です。
↓改造工事のエピソードを↓ 
当時の福井鉄道の車両は、鉄道線用の高床車で、福井市内の軌道部分へ乗り入れる電車は、低床ホームからの乗降用に折り畳み式の2段ステップが付いていました。鉄道車両の2段ステップは珍しく、名鉄にも鉄軌道直通の510形などがいましたが1段ステップでした。事前調査したら写真のように1つのエアシリンダとリンク機構で動作する巧みな構造になっていました。エアシリンダなどの部品を福井鉄道から提供してもらい、改造して600形に取り付けました。
車体幅(2500mm)よりも台車幅が少し大きく、台車の真上に扉があったので軌道部乗降用の折り畳みステップの取付には苦労しました。
出入口の靴ズリを約100mm外へ張り出し、その下にステップを取り付けました。
台車のバネのたわみや、急曲線での首振り時にも干渉しないように隙間を確保する必要があり、一方で乗降のためには車両床面を下げたいという思いもあり、仮組立をしながら試行錯誤で取付位置を調整しました。
福井鉄道600形の輸送

名鉄住商岐阜工場で改造工事を行った600形は、深夜にトレーラーで福井鉄道西武生車庫へ輸送しました。
先導車-本体(トレーラー)-後続誘導車の順に隊列を組んで無線で連絡を取りながら、国道21号→国道8号を走行しました。私は後続誘導車に添乗しました。40km/h程度で走行するため、片側1車線の道路では深夜でも後ろに車が詰まってきます。多く詰まった場合は後続誘導車から連絡し、先導車が待避可能な場所を見つけ待避し、後ろの車列が過ぎ去ったらすぐ出発することを繰り返しました。
敦賀~武生の区間には断面の小さいトンネルがあり、その場合は先先導車が先回りしてトンネルの先で対向車線の車を止め、道路の真ん中を走りました。急カーブの所も同様で、対向車線の車を止めて走りました。
初めて添乗し、車両のトレーラー輸送の大変さを実感しました。
福井鉄道600形602号の改造工事(2次車)
1998(H10).5.12名古屋市交通局名港車庫から1200形1201・1202号を搬出。翌日岐阜工場へ搬入し改造工事を実施(601号と同じ工事内容)。2度目のなので工事は順調に進んだ。1998(H10).11.10福井鉄道西武生車庫へ搬入し、調整・試運転後11.20から営業運転開始。
名鉄住商・岐阜工場 1998(H10).7.10  両運転台化改造工事。 名城線の1201編成はデザイン塗装車でした。
(左)1202号の運転台部分を切取り。 (右)連結部分を切り取った1201号の車体に1202号の運転台部分を結合。
福井鉄道600形602 ①

岐阜工場 1998(H10).10.28

改造工事が完成した602号。
1998.11.9深夜に岐阜工場から福井鉄道西武生車庫へトレーラで輸送しました。

↓検査ピット上の602号
 横には名鉄美濃町線880形
福井鉄道600形602号 ②

西武生車庫 1998(H10).11.11

西武生へ搬入された602号(右)
左には1年前に搬入された601号。
600形が2両並びました。
福井鉄道610形(モハ610-クハ610)の改造工事(3次車)
3次車はラッシュ対策のため2両編成で納入することになった。両運転台化改造を除き601・602とほぼ同じ工事内容。
1999(H11).5.17名古屋市交通局名港車庫から1200形1203・1204号を搬出。1203→クハ610、1204→モハ610。Mc-Tcの2両編成になったのでコンプレッサ・除湿装置等はTc車に配置。1999(H11).11.8に福井鉄道西武生車庫へ搬入。
なお、当初は1997~99年に600形3両を導入する計画だったので、豊橋鉄道から1997年に中古の台車・冷房装置(電源含む)を3両分を購入し保管していた。全4両に増えたので、冷房・電源装置は予備として1組購入していた機器を使用。台車は不足するので福井鉄道からDT21を提供してもらい使用した。その他名鉄の廃車部品(ヒーター等)も有効活用してコスト削減に努めた。
福井鉄道610形

岐阜工場 1999(H11).10.27

改造工事が完了した610形。
手前がクハ610、奥がモハ610。

構内で試運転を実施し、1999.11.7深夜に岐阜工場から福井鉄道西武生車庫へトレーラで輸送しました。
福井鉄道610形

西武生(現・北府) 1999(H11).11.10

610形の完成写真。
手前がモハ610、奥がクハ610。
1999.11.8に西武生車庫へ搬入、整備・調整作業を済ませ、この日試運転が行われました。
改造工事前の610形 1999(H11).5.18 岐阜工場へ搬入時
名古屋地下鉄1203・1204号を搬入。連結部は写真のように幅広の貫通路で扉なし。貫通路の横に小窓があった。
610形の試運転 1999(H11).11.10
連結部の貫通路横の小窓を塞ぎ、屋根へ上がるステップ取付け(外側)・電線の立ち上げ(内部)に使用。
610形の試運転 1999(H11).11.10
大名町交差点の急カーブで、危惧していた幅広の貫通路の渡り板の動きを確認。渡り板に隙間ができないよう、渡り板を継ぎ足した。
610形の連結部の安全対策実施 1999(H11).12.3
貫通路に保護仕切棒を取付けて通路を狭くし、連結間にロープを渡し、安全に連結部を通行できる対策を実施してから営業運転開始。
福井鉄道610形

市役所前(現・福井城址大名町)
        2012(H24).4.5

大名町交差点の急カーブを曲がり福井駅前に向かう610形で、上の写真の12年後です。塗装は変更されましたが健在でした。
福井鉄道は、名鉄の岐阜市内線・美濃町線の廃止(2005.4.1)により、路面電車タイプの770形・880形連接車9本と800形2両の計20両を譲り受け、鉄道線のホームを低床式に改造して2006(H18).4.1に鉄道線で低床車の運行を開始しました。
それらに混じって輸送力の大きい610形はラッシュ時を中心に活躍していましたが、2018(H30)年に廃車になりました。
福井鉄道600形602
 北府 2025(R7).10.12

600形601・602は単行運転のため、ラッシュ輸送に使えず、有効活用されませんでした。そのため3次車は2両編成で導入されました。
601-602の連結化改造も福井鉄道から検討を依頼されましたが、残念ながら費用の面で実現しませんでした。
Wikipediaによれば、601・602号は2006(H18)年から定期運用を外れ
601号は2012(H24)年に廃車
602号は2018(H30)年に引退しましたが、イベント展示用として残されています。
2025.10.12に、北府駅鉄道ミュージアムを見学しました。福井鉄道のエースだった200形が綺麗に整備され車両展示場に保存され、その横に602号が保存されているのを見て、とても嬉しく思いました。
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