津島軽便堂写真館

福井鉄道「すまいるトラム」 名鉄800形が活躍

福井鉄道「すまいるトラム」-01
福井駅前 2001(H13).10.20

「トランジットモール」の社会実験を行うため、名鉄が美濃町線用に2000(H12)年6月に新造した新型車両800形802号を1ヶ月近く借用し「すまいるトラム」として福井駅前~田原町間を走りました。
この802号の輸送・整備を名鉄の車両部門の子会社である名鉄住商工業が請け負い、私も関わりましたので、写真を掲出します。

このわずか3年半後の2005(H17).4.1に名鉄の岐阜地区600V線区が全線廃止になり、800形を含む岐阜の電車20両が福井鉄道へ譲渡されるとは、このときは夢にも思いませんでした。
社会実験の検討段階(2010.10)では、名鉄で廃車となる岐阜市内線の570形or美濃町線の600形車両を譲り受けて使用する予定でした。しかし、当時の福井鉄道の取締役鉄道部長(元・名鉄の運転司令長)が「折角の社会実験だから最新型車両を走らせて世間の注目を集め、大勢の人に利用してもらいたい」と言われ、それに福井市も賛同し、名鉄幹部と折衝した結果、新造から1年しか経っていない最新型低床式車両800形を借用し運行することになりました。
トランジットモール社会実験のパンフレットです。左が表面、右が裏面。かなり意欲的な社会実験だったと思います。
2001(H13).10.12~11.4の間「すまいるトラム」が、福井駅前~田原町間を30分毎、福井駅前~福井新(現・赤十字前)間を30分毎に運行されました。
福井鉄道「すまいるトラム」-02
名鉄岐阜工場 2001(H13).10.9

802号の搬出作業です。
クレーン車で吊り上げ、トレーラーに乗せます。
10月12日の社会実験開始に備え、3日前の10月9日に岐阜工場から搬出しました。
美濃町線の主役として使っていた電車なので、直前の搬出でした。

 ↓名鉄・新岐阜 2001(H13).8.19
   鉄道友の会ローレル賞受賞の直後



福井鉄道「すまいるトラム」-03
西武生(現・北府) 2001(H13).10.10

トレーラーで到着した802号をクレーン車で吊り上げました。
電線が邪魔になることスペースの関係で、クレーン車から直接レール上へ下ろすことができないので盤木で台座を枕木方向に設置しその上へ乗せます。
吊り上げている場所は、現在北府駅鉄道ミュージアムの車両展示場になり福井鉄道のエースだった200形が展示されています。
福井鉄道「すまいるトラム」-04

西武生(現・北府) 2001(H13).10.10

台座の上に下ろされた802号は、クレーン車(反対側へ移動)が吊り上げ可能な位置までコロを使って横移動させます。

後方の古い建物は福井鉄道の本社です。階段を上がるときギシギシと音がしました。


なお、600形の搬入の時もほぼ同じ方法で行いましたが、右の線路で台車入れを行いました。
福井鉄道「すまいるトラム」-05

西武生(現・北府) 2001(H13).10.10

802号を台座から吊り上げ、台座を撤去して、左の線路に台車を転がしてきて、車体を下げて台車入れをしました。
福井鉄道「すまいるトラム」-06

西武生 2001(H13).10.10

慎重に位置合わせをしながら台車入れ作業です。


↓福井鉄道800形-07
車体側のセンターピンを台車の心皿の中央に合わせます。
↑福井鉄道「すまいるトラム」-08
台車入れ作業が終わった後は、輸送時の高さ制限で取り外したパンタグラフの取付です。

←福井鉄道「すまいるトラム」-09
クレーン作業が終わり、福井鉄道本社の人にも協力してもらい、手押しで車庫に入れます。右手前の線路から行ったり来たりしながらの入換でした。朝から始まった搬入作業は時間がかかり13時頃に車庫へ入れることができました。
福井鉄道「すまいるトラム」-10

西武生 2001(H13).10.10

車庫の中で、輸送時に外した部品の取付や配線作業などを行い、電源を入れて通電試験をした後、17:30頃に走行確認ができました。
方向幕も「すまいるトラム」になっています。
翌日に試運転、翌々日の10月12日9:30に福井駅前で社会実験トランジットモールの出発式が行われました。


なお、福井鉄道の運転士・検車掛の6名は、事前(9/28)に名鉄岐阜工場構内で800形の運転教習を実施しました。
福井鉄道「すまいるトラム」-11

福井駅前 2001(H13).10.20

駅前通りが社会実験で「ぷらっとモール」となり賑わっていました。
福井駅前~市役所前の中間の西武百貨店近くに、臨時乗降場ができました。その臨時乗降場で乗客が「すまいるトラム」の到着を待っています。最新型低床車800形は乗客に大好評でした。


800形の輸送に仕事で関わったので、社会実験中に1度は訪ねたいと思い、10月20日(土)に、趣味人として訪問しました。
実は家族で武生菊人形の見物も兼ねていたのですが…
福井鉄道「すまいるトラム」-12

福井駅前 2001(H13).10.20

福井駅前に到着する「すまいるトラム」802号です。
福井鉄道の市役所前(現・福井城址大名町)から福井駅前の路線は、通称「ヒゲ線」と呼ばれています。この当時は複線でしたが、2003(H15)年に歩道の幅を広げるため単線化されました。
福井駅前電停は2016(H28)年に手前側に線路を延伸し、福井駅西口広場に移設、福井駅電停に改称され立派になりました。

2024(R6).3.16の北陸新幹線の開業に伴い、福井駅前が再開発され、この通りの右側(北側)のビルは全部解体され、新しいビルに建て替えられています。
福井鉄道「すまいるトラム」-13

福井駅前 2001(H13).10.20

福井駅前に到着する「すまいるトラム」562号です。
「すまいるトラム」は802号と562号の2両で運行されて、この日は802号が福井駅前~田原町、562号が福井駅前~福井新(現・赤十字前)で各々30分毎の運行でした。

この560形は、元北陸鉄道金沢市内線の2200形で、同線廃止に伴い1967(S42)年に全6両が名鉄岐阜市内線へ譲渡され、1988(S63)年に岐阜市内線の部分廃止により562号が福井鉄道へ譲渡されました。
福井鉄道「すまいるトラム」-14

市役所前(現・福井城址大名町)
     2001(H13).10.20

市役所前で折返し福井新(現・赤十字前)に向かう「すまいるトラム」562号です。後方には田原町に向かう200形も見えます。

この当時の福井鉄道は高床車両で運行され、路面電車タイプの562号がイベント以外で使われることはほとんどありませんでした。

低床車両が主力になったのは、名鉄岐阜線の廃車を譲り受けた後の2006(H18)年からでした。
福井鉄道「すまいるトラム」-15

市役所前(現・福井城址大名町)
     2001(H13).10.20

武生新行きの610形が市役所前を出発しました。
大名町交差点ですれ違う電車の先頭窓から撮りました。

610形の改造工事に関わったので、元気に活躍する姿を見ることができ嬉しかったです。
福井鉄道「すまいるトラム」-16

市役所前 2001(H13).10.20

大名町交差点を曲がり福井駅前に向かう802号です。
すぐ後ろに武生新行きの300形が停車中です。

右の建物が福井県繊協ビルで、このビルに京福バスターミナルがあり、ビルの裏側からバスが発着していました。バスターミナルは2010(H22)年3月末に廃止され、この繊協ビルも建て替えられました。

社会実験期間中(10/12~11/4)の「すまいるトラム」運行時間帯は、市役所前~福井駅前間は「すまいるトラム」以外の電車は走らないダイヤが組まれていました。
福井鉄道「すまいるトラム」-17

市役所前 2001(H13).10.20

市役所前(現・福井城址大名町)を出発して田原町に向かう802「すまいるトラム」です。
前方には、当時の福井鉄道の主役300形、横にはそれ以前の主役200形がいます。
福井鉄道「すまいるトラム」-18

岐阜工場 2001(H13).11.6

802号は福井鉄道で11月4日まで「すまいるトラム」として活躍し、翌5日に西武生車庫を搬出、6日の朝に岐阜工場へ到着しました。
早速、搬入作業を行い、午前中には元の状態に戻りました。

この802号を再び福井鉄道へ輸送することになるとは!夢にも思いませんでした…。
2004(H16).3に名鉄は岐阜市内線などの岐阜地区600V線の全線廃止を表明。その後、(名鉄に非協力的だった)岐阜市が別会社での存続を模索しましたが同年7月に断念し、2005(H17).3.31限りで全線廃止になることが決定しました。
岐阜600V線の新しい車両(路面電車タイプ)については、名鉄グループの福井鉄道と豊橋鉄道から譲渡依頼があり、福井鉄道へ880形連接車5本、770形連接車4本、800形2両の計20両を譲渡。豊橋鉄道へ780形7両、800形1両の計8両を譲渡することになりました。
20両の低床車両を譲り受けた福井鉄道は、鉄道線ホームを全部切り下げて低床ホームとして、2006(H18).4.1から全線で低床車両の運転を始めました。これは車両を一気に近代化する思い切った決断だと感心しました。2001(H13)年のトランジットモール社会実験で800形を走らせた成果だと私は思います。
なお、岐阜600V線の全廃と同時(2005.3.31)に私が勤務していた名鉄住商工業が解散になりました。社員(約550人)の大部分は名鉄の車両整備をしていたので、そのまま名鉄へ原籍復帰という形になりましたが、他社の車両工事は縮小する方向になり、私も他社車両工事の担当から外れました。中部地方の中小私鉄・三セクの車両改造・整備を一手に引き受け、信頼を得て頼りにされていたのに残念な思いをしました。
福井鉄道800形-19

武生新(現・たけふ新)2006(H18).10.14

武生新に停車中の800形と880形×2本です。
2006(H18).4.1から全線で低床車両の運転を始めました。その半年後に訪問して撮りました。


武生新駅ホームの鉄柱下のコンクリート円柱土台部分がホームを切り下げた高さです。
福井鉄道200形-20

福井駅前 1997(H9).7.20

停車中の200形に子供が頑張って乗り込みます。

高床車両へ市内線の低床ホームから乗り込むには、高いステップを上がる必要がありました。

ローカル線の乗客は、高校生・老人・子供がほとんどの時代でしたが、老人・子供には敷居の高い乗り物でした。
福井鉄道200形-21

市役所前 2015(H27).3.27
  (現・福井城址大名町)

停車中の200形にお年寄りが乗り込みます。

2013年から3車体連接の超低床電車F1000形フクラムが導入され、昔からの高床車両が終盤を迎えていたので撮りに行きました。
今となっては、懐かしい光景です。

この2枚の写真(20・21)を見ると、低床車両を導入したのは正解だったと思えます。
福井鉄道800形-22

802号車内  2012(H24).4.5

福井鉄道所属の802号です。車内から先頭部分を撮りました。
「ローレル賞・2001」のプレートが輝いていました。
福井鉄道800形-23

市役所前  2012.4.5

大名町交差点ですれ違う802号と連接車880形です。

880形の行先は越前武生になっています。武生新→2010越前武生→2023たけふ新と駅名が変わりました。

800形は、連接車に比べ輸送力が小さかったので、ラッシュ輸送には使用できず、3連接のF1000形フクラム増備に伴い、2019(H1)年に2両とも福井鉄道からは姿を消し、豊橋鉄道へ譲渡されました。
福井鉄道-24

福井駅前  2006(H18).10.14

福井駅前を出発した802号です。

福井駅前の「ヒゲ線」は2003(H15)年に歩道の幅を広げるため単線化され、福井駅前電停も屋根付きになりました。
2016(H28)年に向こう側に線路を延伸し、この電停を福井駅西口広場に移設、福井駅電停に改称され便利で立派な電停になりました。
福井鉄道-25

福井駅  2025(R7).10.12
 (旧・福井駅前電停付近)

上の写真24と同じ場所で19年後に撮りました。
見比べると、福井駅前のあまりの変貌ぶりに驚かされます。
電車は2013(H25)年に登場したF1000形フクラム1001号でラッピング広告車でした。

福井鉄道は名鉄グループの会社でしたが、2008(H20)年12月に名鉄は福井鉄道から撤退し、以後は福井県や地元自治体などの手厚い支援により運行され、新型車両「フクラム」の導入、えちぜん鉄道と直通運転などが実施されました。その昔、オンボロの木造本社を訪ね、厳しい経営状況を聞かされていた私にとっては隔世の感があります。
福井鉄道-26

福井駅  2025(R7).10.12

ドイツ製イベント車両「レトラム」が福井駅を出発しました。

レトラム運転日に合わせて、学生時代の鉄仲間と一緒に乗りに行きました。
たけふ新→福井駅を乗車した後、折返し出発するレトラムを撮りました。

レトラムの乗車記録は、一緒に乗車したrailbusさんのHPに掲載されています。ご覧ください。
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